Samsung Medison が神経検出モデルを開発

インテル® Geti™ プラットフォームは、Samsung Medison の AI NerveTrack モデルのトレーニング・プロセスを効率化し、簡素化します。

概要:

  • Samsung Electronics の関連会社である Samsung Medison は、世界的な医療機器メーカーであり、超音波システムを製造しています。

  • Samsung Medison は、インテル® Geti™ プラットフォームと連携しました。コンピューター・ビジョンの AI プラットフォームの直観的なユーザー・インターフェイスにより、小規模な医師グループは、わずか数週間で数万枚の画像に注釈を付けた後、AI エンジニアチームへ提供して、Samsung Medison NerveTrack のモデル・トレーニングを実施することができました。

Samsung Medison の NerveTrack1 は、革新的な超音波機能であり、麻酔使用時のリアルタイムでの神経構造の特定に使用されます。NerveTrack の精度とスピードは、医師と AI エンジニア間のコラボレーション・プロセスを通じて開発された AI モデルによるものです。

NerveTrack のディープラーニング推論モデルのトレーニングには、数千の注釈付き超音波の参照画像が必要です。画像の注釈付けプロセスは、小さく捉えにくい神経構造の特定において長年にわたる医療訓練と経験を持つ医師が実施することが最適です。しかし、一般的に、注釈付けツールと方法は、最終的に画像を使用してモデルのトレーニングを行うコンピューター・エンジニアとデータ・サイエンティスト向けに設計されているため、医師にとって困難で時間がかかる場合があります。

注釈付けとワークフローのモデリング、およびチーム間のコラボレーションを改善するために、Samsung Medison は、インテル® Geti™ プラットフォームと連携しました。このコンピューター・ビジョンの AI プラットフォームの直観的なユーザー・インターフェイスにより、小規模な医師グループは、わずか数週間で数万枚の画像に注釈を付けた後、AI エンジニアチームへ提供して、モデル・トレーニングを実施することができました。

課題: AI モデルのトレーニング・プロセスに医療の専門家を含める

Samsung Medison は世界的な医療機器メーカーであり、NerveTrack は、同社の高解像度超音波マシンを使用して超音波ガイド下局所麻酔 (UGRA) と疼痛処理を行う医師向けのリアルタイム・アシスタントとして開発されました。麻酔科医やその他の医療専門家は、超音波のディスプレイを見ながら、神経のある場所に注射器を配置します。NerveTrack はその際、医師が神経構造をより迅速かつ正確に特定するのに役立ちます。

NerveTrack モデルは、ディープラーニングの推論モデルを搭載しており、これによりシステムはリアルタイムで神経構造を特定できます。当初、NerveTrack のカスタムの AI 推論モデルは、手首の神経のみを検出するようにトレーニングされていました。Samsung Medison は、その使用用途を拡大するために、次にその能力の拡張に注力し、AI 推論モデルが肘、肩、首の周辺神経構造も特定できるようにしました。

周辺神経は、非常に小さく、薄いため、特に検出が困難です。超音波画像内の「ノイズ」やアーティファクトは、神経自体を隠す場合があります。神経は、すべて同じに見えるわけではないため、画像注釈のプロセスにおいて、麻酔科医や神経科医の専門知識に依拠して、さまざまな画像における神経を特定することが非常に重要です。注釈なしでは、ディープラーニング・ベースの AI モデルは、神経を正しく特定できなかったり、画像内のノイズと微小な有機構造を区別できない場合があります。また、神経は、体内のほかの構造と相対的に移動するため、超音波画像は、通常、一連のビデオフレームとして取り込まれます。

神経構造の小ささ、複雑性、および可変性のため、Samsung Medison は、数十万枚の超音波画像に参考とする注釈を付けて、各 NerveTrack モデルをトレーニングする必要がありました。ただし、AI エンジニアは、人体解剖学の深い知識がないため、画像に自ら注釈を付けることはできません。代わりに、注釈は、麻酔科医、神経外科医、その他の臨床医などの医療の専門家が作成する必要があります。これら専門家の長年にわたる研究と経験が、神経構造を正確に認識し、特定することを可能にするためです。

Samsung Medison による NerveTrack アプリケーションの拡張においての主な課題は、画像注釈に必要な専門知識を持つ多忙な医師や専門家たちの時間を確保することでした。

ソリューション: インテル® Geti™ プラットフォームが、医師を支援

Samsung Medison は、最初のバージョンの NerveTrack 向けに、何十万枚もの手首の神経の超音波画像を集めました。注釈方法は、AI エンジニアが、AI エンジニアおよび多大な技術サポートを必要とする、注釈を行う医師たち向けに設計したオープンソースの独自のツールに依存しました。

肘、肩、首の神経構造向けの新しい推論モデルを必要とする次のバージョンの NerveTrack 向けには、Samsung Medison の AI エンジニアは、何万枚もの追加の注釈付き画像を収集して、最も正確なモデルを構築する必要があることを認識していました。

Samsung Medison は、初期バージョンの NerveTrack の開発において直面した課題に基づき、注釈プロセスを効率化し、簡素化できるほかのソリューションの検討を開始しました。そこで、次の注釈に向けて、インテルの直感的で使いやすいインテル® Geti™ プラットフォームに注目しました。

インテルは、Samsung Medison にインテル® Geti™ プラットフォームへの早期アクセスを提供して、第 2 バージョンの NerveTrack 推論モデルの開発における注釈プロセスの簡素化を支援しました。Samsung Medison は、新しいインテル® Geti™ プラットフォーム対応の注釈プロセスを、わずか 13 枚の超音波画像からなる限られたデータセットで、概念実証向けにテストすることから開始しました。何人かの医療専門家が、概念実証を成功させ、ポインティングとクリックのグラフィカル・ユーザー・インターフェイスと AI 対応注釈アシスタントを備えたインテル® Geti™ プラットフォームが、直感的で使いやすいものであると認めました。

インテル® Geti™ プラットフォームは、注釈アシスタントを提供しており、ユーザーが図形を描画したり、画像に簡単にラベル付けを行うことを可能にします。このプラットフォームは、画像のサブセットに注釈を付けた後、注釈予測を提供します。ユーザーは、必要に応じて予測を受け入れたり、修正し、ラベル作成プロセスを効率化します。これらの直観的な機能により、医師たちは、技術サポートをほとんど必要とせずに、肘、肩、首の神経構造の画像に迅速かつ正確に注釈を付けることができました。

インテル® Geti™ プラットフォームのアクティブラーニングは、データ注釈を自動化し、モデルをトレーニングするために必要な注釈の数を最小限に抑えることができます。アクティブラーニング機能は、Samsung Medison の NerveTrack プロジェクトにおける AI 注釈予測を提供し、これをより高速で手間のかからない注釈プロセスへと変換しました。

超音波画像は、注釈付きバージョンと比較した AI 学習モデルのターゲットを示しています。

図 1.左側の画像は、NerveTrack マシンラーニング・モデルのターゲットとなる地上検証データを表しています。右の画像は、13 枚の注釈付き超音波画像に基づいて、推論モデル・トレーニングの概念実証向けにインテル® Geti™ プラットフォームで注釈を付けたものです。

病院とプロバイダー全体でインテル® Geti™ プラットフォームを拡大

Samsung Medison は、テスト結果に満足し、インテル® Geti™ プラットフォームでの開発を進め、わずか 2 カ月で、数万件の新しい注釈を収集しました。

韓国のいくつかの病院が、このプロジェクトに超音波ビデオ画像データを提供しました。医師たちは、独立して作業し、個々に専門知識を持つ分野に貢献することができました。すべての注釈付き画像が送信されると、さまざまなアプローチが結果となるデータセットの偏りを軽減することに役立ちました。これにより、新しい NerveTrack モデルをより正確なものにし、より広範なエンドユーザーに適応できるようにすることが期待されました。

インテル® テクノロジーが、AI 推論、最適化、導入をサポート

その後、Samsung Medison の AI エンジニアとプログラマーが、肘、肩、首の神経構造の注釈付き画像の最終的なデータセットを分類し、処理して、ディープラーニング・フレームワークのリファレンス画像データベースを作成しました。このフレームワークは、NerveTrack モデルの第 2 段階をトレーニングし、それらの神経部位向けの AI 推論エンジンを開発するために使用されました。このモデルは、インテル® ディストリビューションの OpenVINO™ ツールキットを使用して、対象とする超音波マシンで NerveTrack を実行するインテル® Core™ i3 プロセッサー向けに最適化されました。

これらの新しい NerveTrack モデルは、インテル® ディストリビューションの OpenVINO™ ツールキットのサポートにより、規制当局の承認を受けて、Samsung Medison の高解像度超音波マシンに導入されます。

Samsung Medison は、肘、肩、首の NerveTrack モデルをトレーニングし、導入するために、いくつかのインテル® テクノロジーを 8 段階のプロセスで活用しました。

  1. 超音波画像とビデオを取得
  2. 身体の各部位に個別のインテル® Geti™ プラットフォーム・プロジェクトを作成
  3. 医療の専門家を集め、プラットフォームを使用して手動で小さなサンプルのデータセットに注釈付け
  4. インテル® Geti™ プラットフォームで個々のモデルをトレーニング
  5. インテル® Geti™ プラットフォームのアクティブラーニング機能を AI 注釈予測に使用して、残りの画像データに注釈付け
  6. REST API を使用して、すべての病院における各プロジェクトのすべてのデータセットを統合し、統合データセットによりモデルをトレーニング
  7. インテル® ディストリビューションの OpenVINO™ ツールキットを使用して、モデルを最適化および導入
  8. 新しいモデルを NerveTrack に組み込む

詳細情報

Samsung Medison NerveTrack について


Samsung Electronics の関連会社である Samsung Medison は、世界的な医療機器メーカーであり、超音波システムを製造しています。Samsung Medison は、その研究開発能力と、高度なテクノロジーの革新的な使用で、世界的に知られています。同社のNerveTrack モデルは、AI 対応の人間の神経構造の推論モデルであり、医師たちは Samsung Medison の超音波デバイスを使用して、局部麻酔の針配置をガイドしたり、その他の治療を行う際に参考にすることができます。

インテル® Geti™ プラットフォームについて

インテル® Geti™ プラットフォームは、単一のシームレスなグラフィカル・インターフェイスを提供し、マシンラーニング・モデルをラベル付け、トレーニング、および最適化します。ユーザーに使いやすいプラットフォームは、アクティブラーニングを使用して、データの注釈付けとモデルのトレーニングを直感的かつ高速に行います。

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