インテルのテクノロジーが CPU のパフォーマンスを向上する仕組み

インテル® ターボ・ブースト、インテル® サーマル・ベロシティー・ブースト、インテル® アダプティブ・ブースト・テクノロジーがどのように連携するか、以下にご説明します。1 2 3

重要なポイント:

  • 一連のブースト・テクノロジーの連携で、CPU のパフォーマンスを向上します。

  • インテル® ターボ・ブースト・テクノロジー 2.0 は、必要に応じて CPU を基本動作周波数より高くすることができます。

  • インテル® ターボ・ブースト・マックス・テクノロジー 3.0 は、パフォーマンスを最適化する最速のコアを識別します。

  • インテル® サーマル・ベロシティー・ブーストは、サーマル・ヘッドルームがある場合に、すべてのコアを高速化します。

  • インテル® アダプティブ・ブースト・テクノロジーは、2 つ以上のコアが動作しているときに周波数を高速化します。

ワークロードによって、システムの CPU に対する要求は異なります。通常、プロセッサーは、ワード・プロセッサーを実行したり、ウェブの閲覧などの負荷の低い要求を簡単に処理することができます。しかし、ゲームプレイ、ビデオ編集、コンテンツのストリーミングなどの重いタスクは、より負荷がかかります。

一連のブースト・テクノロジーはこの違いに対応し、インテルのプロセッサーが、作業中のタスクに適応できるようにします。これは、CPU の動作周波数 (クロック周波数) を上げることによって行われます。

ブースト動作の仕組みを説明する前に、理解しておくべき 2 つの仕様項目があります。

基本動作周波数とは、システムが動作していない状態や軽負荷の時に CPU が実行する周波数のことです。基本動作周波数で実行している時は、CPU の消費電力と発熱量は低くなります。常にフルスピードで動作させるのではなく、時々低い周波数で動作させることも、プロセッサーの寿命を延ばすのに役立ちます4

ターボ時最大周波数とは、ゲームのような要求が厳しいアプリケーションで CPU に負荷がかかった場合に、CPU が目標とする周波数のことです。これは、オーバークロックを行わずに CPU が達成する、シングルコアの最大周波数です。

システムに十分なパワーとサーマル・ヘッドルーム (高性能の空冷式または水冷式の CPU クーラーなを考慮) があれば、より負荷の高いワークロードに適切に対応できるように周波数を飛躍的に上げることができます。

最新世代のインテル® Core™ CPU では、複数のブースト・テクノロジーが連携して動作し、一部は単一のコアに、新しいインテル® アダプティブ・ブースト・テクノロジーのように、複数のコアに影響を与えるものもあります。以下に各ブースト・テクノロジーについて掘り下げて説明しますが、簡単な参照表はこちらをご覧ください:

インテル® ターボ・ブースト・テクノロジー 2.0 とは?

インテル® ターボ・ブースト・テクノロジー 2.0 は、2011年以降リリースされた多くのインテル® Core™ i5、i7、および i9 CPU に搭載されているため、一度は耳にしたことがあるブースト・テクノロジーでしょう。

これは前述したブースト・テクノロジーの基本バージョンと考えることができます。これは、低負荷の作業時には CPU を低い基本動作周波数で実行し、負荷がピークになると高い周波数で実行させる、電力効率の高いテクノロジーです。

インテル® ターボ・ブースト・テクノロジー 2.0 はすべてのコアの動作周波数を引き上げます。また、処理速度の向上が有効となるには、CPU は電力、電流、温度の制限内で動作している必要があることにご留意ください。

インテル® ターボ・ブースト・マックス・テクノロジー 3.0 とは?

製造上の違いにより、プロセッサー・コアの可能な最大周波数は異なります。インテル® ターボ・ブースト・マックス・テクノロジー 3.0 は、CPU 上で最速のコアを最大 2 つまで、「優先コア」として識別します。次に、それらのコア (またはそのコア) に周波数のブースト機能を適用し、重要なワークロードを割り当てます。

インテル® ターボ・ブースト・マックス・テクノロジー 3.0 は、インテル® ターボ・ブースト・テクノロジー 2.0 を置き換えるものではありません。これは、優先コアに追加のブーストを与える別のテクノロジーです。これにより、軽量にスレッド化されたアプリケーションのパフォーマンスが向上します。

対照的に、マルチスレッド・アプリケーションはより多くの作業を並行して実行し、コア数の増加やハイパースレッディングなどの機能によって拡張します。

ゲームや多くの一般的なアプリケーションでは、動作周波数の高いコアに依存しており、4インテル® ターボ・ブースト・マックス・テクノロジー 3.0 の恩恵を受けることができます。

他のブースト・テクノロジーと同様に、インテル® ターボ・ブースト・マックス・テクノロジー 3.0 の効果を有効にするには、CPU が電力、電流、温度の仕様値を下回って動作していることが必要です。

インテル® サーマル・ベロシティー・ブーストとは?

2018 年に導入されたインテル® サーマル・ベロシティー・ブースト (TVB) は、サーマル・ヘッドルームとターボ機能に割り当てられる電力がある場合に、CPU のパフォーマンスを向上させるテクノロジーです。これは、インテル® Core™ CPU が、より高い最大ターボ周波数に到達することを可能にする技術スタックのもう 1 つの構成要素です。

TVB は、プロセッサーの温度がしきい値 70°C 以下にある場合、クロック周波数を 100MHz 上げます。ノートブック PC 向け CPU の場合、しきい値温度は 65°C です。クライオクーラーなどの高性能な空冷式または水冷式冷却器は、システムの温度をしきい値以下に維持するのに役立ちます。

TVB は、バースト的な負荷 (CPU 使用率が急激に上昇するプログラム) に対応するのに最適です。TVB はシステムの応答性パフォーマンスを一時的に向上させ、通常経験するパフォーマンスの低下を解消できる可能性があります。

作業中のタスクに応じて、TVB は、シングルコアまたは全コアの周波数を上げることができます。

シングルコア TVB は、CPU の最速コアに影響を及ぼします。シングルコア TVB は、インテル® ターボ・ブースト・マックス・テクノロジー 3.0 でパフォーマンスが向上した優先コアに対する追加のブースト機能として働きます。

全コア TVB はすべてのコアを強化し、標準的なブースト機能に加えて最大 100MHz まで動作周波数を引き上げます。

インテル® アダプティブ・ブースト・テクノロジーとは?

インテル® アダプティブ・ブースト・テクノロジーは、全コアのターボ周波数を状況に応じて従来のターボ・ブースト・クロック周波数を超えて増加させます。

インテル® アダプティブ・ブースト・テクノロジーのメリットは、多くの最新ゲームなど、マルチコアで拡張するカテゴリーである、マルチスレッド化されたプログラムで発揮されます。また、ゲーム、ストリーミング、Discord を同時に実行するような、マルチタスクの状況でも役立ちます。

インテル® アダプティブ・ブースト・テクノロジーは、CPU が ICCMax 制限 (最大電流) を下回り、かつ制限温度 100°C 以下の場合に動作します。つまり、インテル® サーマル・ベロシティー・ブーストのしきい値である 70°C を超える温度でもこの機能は有効なままです。

インテル® アダプティブ・ブースト・テクノロジーによる動作周波数の引き上げやその持続時間は、さまざまなワークロード、冷却ソリューション、およびプロセッサーの機能によって異なります。

CPU に影響を与える、その他のブースト・テクノロジー

上述のテクノロジーは CPU の動作周波数に影響を与える、主なブースト機能です。しかし、特定のアプリケーションにおいて CPU の動作を最適化するのに役立つその他のテクノロジーもあります。

インテル® ディープラーニング・ブーストは、複雑な AI ワークロード向けに設計されており、AI の推論とデータセットからの学習を高速化します。インテル® ディープラーニング・ブーストは、画像分類、翻訳、音声認識、その他のタスクに役立ちます。日常的な作業を行うユーザーにとっては、AI が支援するいくつかのタスクを迅速化できます。例えば、アルバムの画像を、被写体や場所ごとに自動的に分類するプログラムを使用するなどが挙げられます。

インテル® スピード・シフト・テクノロジーは、オーバークロック中に BIOS で UEFI オプションを調べる際に、目にする機会が多い用語でしょう。2015年に導入されたこの技術により、CPU の動作周波数をより細かく制御できるようになり、最大動作周波数まで素早く引き上げることが可能です。これにより、システムの応答性と効率性が向上するため、インテル® スピード・シフト・テクノロジーを有効にしたままにすることを推奨します。

インテル® ターボ・ブースト・テクノロジーを使用する方法

インテル® ターボ・ブースト・マックス・テクノロジー 3.0 やインテル® アダプティブ・ブースト・テクノロジーなどのテクノロジーによるパフォーマンス向上を体験するには、互換性のある CPU があれば十分です。ほとんどのブースト・テクノロジーでは、特別な設定は必要ありません。