仮想と現実の境界が曖昧になりつつある世界で、少し前までは SF 作家のイマジネーションの中にしか存在しなかった、息を飲むような体験が実現されています。
仮想現実 (VR) はこの数年間ずっと「次なる目玉」のままでしたが、鮮やかな仮想世界のど真ん中に置かれたようなリアルなイメージ、サウンド、その他の感覚を生み出す方法として、ついにその時代の到来となりました。現実の環境に仮想的要素を追加する拡張現実 (AR) も話題になっており、どちらのテクノロジーも未来世界の大きな部分を占めることは間違いありません。複合現実 (MR) では、仮想ビデオゲームをプレイする中で、実際の瓶を手でつかんだり、その瓶でゲームの架空キャラクターに一撃を加えることもできます。想像と現実がこれほどまでに混ざり合うことは、これまでなかったことです。
あまりにも多くのことがものすごい速度で起こっているため、まだ VR、AR、MR の違いが少々混乱しているようです。この魅力的なテクノロジーはどれも、ほぼ誰にでも利用できますが、苦労して得たお金で最新のヘッドマウント・ディスプレイを買う前に、素晴らしい VR、AR、MR 体験に必要となるものを詳しく見てみましょう。
仮想現実の歴史と今後
「仮想現実」を手に入れようとする試みは、この 5 年、10 年よりもはるかに以前から重ねられてきました。1950 年代には覗き込む方式のおもちゃ、1960 年代には閉鎖式フライト・シミュレーターが登場していましたが、VR のアイデアはさらに過去までさかのぼります。
1930 年代にはすでに、SF 作家、発明家、アマチュア科学者が、技術と機械を使って現実から逃避できる環境を夢見ていました。仮想現実と拡張現実と複合現実の違いについては、それぞれを実現する技術を手にするずっと前から比較検討されてきました。
テクノロジーが小説に追いついたため、市場調査の専門家は VR 業界の急成長を予測するようになりました。
VR と AR の統合 - MR
まずは一番大切な、この用語の定義から始めましょう。仮想現実は、実際の仮想現実体験と類似したほかのテクノロジーを説明する総称としても使用できますが、同じものではありません。では、拡張現実と複合現実の違いは何でしょう?以下に詳しく説明します。
バーチャル・リアリティー
VR はこの 3 つのテクノロジーの中で最も広く知られています。VR は人の感覚を錯覚させて、実際の環境とは別の環境や世界に自分がいるかのよう感じさせるので、完全な没入感が得られます。ヘッドマウント・ディスプレイ (HMD) またはヘッドセットを使用して、コンピューターが作り出すイメージとサウンドの世界を体験します。そこでは、コンソールや PC につながったままハプティック・コントローラーでオブジェクトを操作したり動き回ることができます。
拡張現実
AR は現実世界の要素にデジタル情報を重ね合わせます。Pokémon GO* は最もよく知られた例です。拡張現実は現実世界を中心に据えますが、それをデジタル情報で拡張し、新しい知覚層を重ねて現実または環境を補完します。
複合現実
MR は現実世界とデジタル要素を融合します。複合現実では、次世代のセンサーや画像テクノロジーを使用して、物理的なアイテムや環境と仮想的なアイテムや環境の両方とやり取りや操作を行います。複合現実により、周りの世界を見たり、そこに入り込んで自分の手を使って仮想環境とやり取りできます。これはすべてヘッドセットを着けたままで行います。片方の足や手は現実世界に、もう片方は想像の場所に置くことができるため、現実と仮想の間の概念が消失し、ゲームや仕事を行う現在の方法を一変させるような体験が提供されます。
仮想現実テクノロジーの利用
ゲームから映画や医療まで、仮想現実、拡張現実、複合現実の利用は広がっています。
- 医療 - 手術シミュレーションなどのトレーニング用として
- 映画とテレビ - 映画やテレビ番組でユニークな体験を創り出す方法として
- 仮想旅行 - 自宅に居ながら美術館やほかの惑星への仮想ツアーの手段として
- プロスポーツ - プロおよびアマチュアアスリート向けの、STRIVR などのトレーニング・プログラム用として
- ゲーム - 一人称視点のシューティング・ゲームからロールプレイング・アドベンチャー・ゲームまで、すでに入手可能になっている 1,000 本以上のゲームとして
必要なもの: ヘッドセット
すでにたくさんの VR ヘッドセットが販売され、パフォーマンス・レベルも価格もさまざまです。Google Cardboard* などのエントリーレベル製品ではユーザーのスマートフォン画面を使用しますが、HTC Vive* や Oculus Rift* のような PC で操作するデバイスでは、ワンランク上の臨場感あふれる VR 環境が実現されます。Microsoft は、Acer、Asus、Dell、HP、Lenovo、Samsung が提供する完全没入型ヘッドセットを使用する Windows* 10 Mixed Reality プラットフォームを提供しています。
現在、いくつかの AR ヘッドセットが販売されていますが、今後さらに多くの製品の投入が予想されます。優れたヘッドセットの例としては、Microsoft* Hololens*、Google Glass*、Meta 2* などが挙げられます。
PC 接続型の HMD のシステム要件はそれぞれ異なっているため、新しい仮想現実ヘッドセットを購入する場合は、HMD ベンダーに推奨要件と最小システム要件を確認する必要があります。
必要なもの: コンピューター
新しい PC の購入を検討していて VR にも興味があるなら、高負荷の処理にも耐えられる製品が必要です。仮想現実 (さらにゲームやビデオ編集など、その他の高度なタスク) のためのハイエンドのデスクトップ PC またはノートブック PC ということになると、CPU、GPU、メモリーが最も重要な構成要素となります。
これらの高性能コンポーネントが協調して動作しないと、残念ながらお粗末な体験となってしまうかもしれません。強力なシステムならば、身体を傾けたり、立ち上がったり、歩き回ったりするだけで、確実に楽しい体験を約束してくれます。タイムラグのある VR では仮想世界が期待どおりに応答できません。この場合、がっかりするだけでなく乗り物酔いに陥るリスクも高まります。
ハイエンド・プロセッサーによって位置追跡がアシストされ、仮想環境のリアリティーと臨場感が制御されるため、より忠実に再現された環境ではより深い没入感を楽しむことができます。優れた VR 体験を得るために、最新世代のインテル® Core™ i7 プロセッサーをご検討ください。
ディスクリート・グラフィックス・プロセシング・ユニット (GPU) をお勧めします。また、Oculus Rift*、HTC Vive*、Windows* Mixed Reality Ultra の場合、GPU は必須条件です。GPU は、VR に必要な臨場感あふれる高解像度画像のレンダリングを担います。Oculus、HTC、Microsoft のウェブサイトには、ダウンロード可能なプロファイラー・ツールが用意されています。ご使用の PC でこのツールを実行すると、VR ヘッドセットの最小要件が満たされているかどうかを確認できます。
体験の選択
VR と AR の新しいテクノロジーと製品が続々と市場に投入され、一般ユーザーはだれでも新たな環境にアクセスできるようになっています。仮想か、拡張か、複合か、新しい「現実」を選ぶのはあなたです。想像力と期待感を膨らませて新しいデバイスを試し、経験を拡張しましょう!
知っておくべき重要な VR 用語
次の表を利用して、VR 用語とその定義を確認してください。
用語 |
詳細 |
重要な理由 |
---|---|---|
1 秒当たりのフレーム数 (FPS) |
システムが連続して画像 (フレーム) を表示できる頻度 |
高速かつ一定のフレームレート (60 FPS 以上) が得られないと、動きが適切に見えず、気分が悪くなることさえあります |
視野角 |
目で観測可能な世界の角度 |
表示の枠が狭すぎると、不自然に首を回さなくてはならなくなります |
自由度 (DoF) |
オブジェクトを移動または回転させることができる方向の数。自由度 6 とは、ピッチ、ロール、ヨー、左右、前後、上下を指します |
DoF の度数が高いと、VR でそれだけより自然に動くことができます |
レイテンシー |
システムが動きやコマンドに反応 / 応答するのにかかる時間 |
ユーザーが仮想現実の中にいる場合、レイテンシーが非常に重要です。システムが即座に応答できないと、リアルさが感じられなくなります |