5G Core (5GC) ネットワークとは?
コアは、接続と管理のための重要な機能を扱う、通信プロバイダー (CoSP) のモバイル・ネットワークの中核となるものです。5G コア (5GC) が従来のネットワーク・コア導入と異なるのは、高性能な 5G 接続を実現すると同時に、仮想化、コンテナ化、マイクロサービスなどの重要なクラウドネイティブ・イノベーションを活用することです。
5GC ネットワークの重要な機能には以下が含まれます:
- ネットワーク・スライシング: 共通の物理的なネットワーク・インフラストラクチャーに複数の仮想ネットワークのレイヤーを構築。
- コントロール・プレーン: データパケットをどこでどのようにルーティングするかといったネットワークの動作を定義するルールとポリシー。
- クロスネットワーク API 統合: あるネットワークで管理されているアプリケーションが、別のネットワークのデータへアクセスまたは変更を行うことを可能に。
- ユーザーまたは SIM 認証: ネットワークにアクセスしているユーザーが、アクセスを許可されているかを検証。
前世代の 4G Long Term Evolution (LTE) コア・ネットワークが実現する理論データレートは最大 100Mbps です。これと比較して、5GC ネットワークは最大 20Gbps の理論データレートを実現できます。このネットワーク速度をクラウドネイティブな柔軟性と組み合わせることで、接続性の新時代を迎え、自動運転やスマートシティーなどの高度なユースケースを支えることができます。
5G ネットワーク・コアのメリットを理解
商用、エンタープライズ、エンドユーザー・アプリケーションにおけるパラダイムシフトに加え、5GC は競争力に直接影響を及ぼす重要なメリットを CoSP に提供します:
- パフォーマンス: 5GC は、5G モバイル・ネットワークの速度を実現するだけでなく、コントロール・プレーン機能 (CPF) とユーザー・プレーン機能 (UPF) 双方のデータ・スループットを劇的な新たな高みに引き上げます。例えば、Samsung は最大 1Tbps の UPF データ・スループットを達成しました。
- 効率性: 事業運営費 (OpEx) の削減とサステナビリティーの目標達成のため、CoSP は電力効率を向上させることができます。ダイナミック・パワー・チューニングなどの機能では、ネットワーク上の予測可能な需要を満たすために電力サイクルを調整できます。例えば、SK Telcom はトラフィック・ピーク時の電力消費量を 30% 削減しました。
- 柔軟性: 従来型の導入では、固定機能のハードウェアにサービスが結び付けられ、新しいサービスには、導入に時間がかかるインフラストラクチャーの変更が必要でした。5GC では、新しい機能やサービスは、基盤となるハードウェアから分離され、コンテナや Kubernetes などのクラウド・ツールを使用して迅速に導入されます。
- 回復性: コンテナベースのサービスでは、運用に必要なすべてのものがパッケージ化されており、ネットワーク全体でのアイソレーションとフォールトトレランスを促進しながら依存性を削減します。
5GC ネットワーク導入を計画
4G LTE から 5G への変換には、新しいテクノロジーを既存の投資に統合する範囲について CoSP とそのテクノロジー・プロバイダーの間で戦略的な検討を行う必要があります。CoSP は、既存の 4G LTE インフラストラクチャーに仮想化テクノロジーのレイヤーを追加することで、3GPP モバイル規格の 5GC ネットワークの定義に沿ったネットワーク機能を実現できます。このタイプの導入は、ノンスタンドアロン (NSA) コアとして知られています。
アプローチを選択: スタンドアロン vs ノンスタンドアロン・コア
NSA の実装では、5GC への移行は容易ですが、最終的には、インストールされた 4G LTE ベースのレイテンシーと機能による制限が残ります。逆に、5G スタンドアロン (SA) コアでは、5G 速度を実現するため、分散機能、サービスベースのアーキテクチャー、最新世代のプロセッサーを搭載した真のクラウドネイティブなハードウェアとソフトウェアが求められます。スマートシティーやスマート・ファクトリーなど、デバイス密度の高さとミッションクリティカルなレイテンシーが要件となるユースケースでは、5G SA コアが必要です。
この IDC 調査をダウンロードして、5G SA コアに関する CoSP の展望と業界の現状について ご覧ください。
実証済みのインテルによる 5GC ロードマップと製品ポートフォリオを活用
10 年以上にわたってコアを仮想化する動きの最前線に立ってきたインテルは、現在、CoSP がクラウドネイティブな 5G コアへの移行に成功できるようより広範なエコシステムとの連携を行っています。
コンピューティング: インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー
第 4 世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーは、前世代と比較して最大 30% 向上した UPF パフォーマンスで、CoSP が競争力維持のために必要とする卓越した性能と効率性を実現します。1この最新世代には、AI、セキュリティー、HPC、ネットワーキング、分析、ストレージなど、今日の最も要求が厳しい各ワークロード向け専用アクセラレーターを含むインテル® アクセラレーター・エンジンが統合されています。
セキュリティー: 統合型 5G コア・ネットワーク・セキュリティー機能
クラウドネイティブなアーキテクチャーによって 5G SA コアの柔軟性が高まる一方で、セキュリティーの課題も生じます。高度分散型のサービスベース・アーキテクチャーとウェブベースの API が含まれるため、ネットワーク全体のアタックサーフェスは増加します。
第 4 世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーに統合されているワークロード・アクセラレーター、インテル® クイックアシスト・テクノロジー (インテル® QAT) は、暗号化と圧縮のワークロードをオフロードして、ほかの重要な作業向けに貴重な CPU サイクルを解放します。インテル® ソフトウェア・ガード・エクステンションズ (インテル® SGX) といったそのほかの内蔵セキュリティー機能により、移動中のマイクロサービスやワークロードの信頼できる実行環境が実現し、CoSP がエッジツーコアのワークロードの安全性を確保するのが容易になります。インテル® SGX により、どのようにしてインテルと Fortanix が 5GC 通信の安全性を確保しているかをご覧ください。
最適化: インテル® Infrastructure Power Manager
5GC リファレンス・ソフトウェア向けのインテル® Infrastructure Power Manager により、CoSP はインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー・ファミリーで提供されるテレメトリー機能を活用することができます。このソフトウェアは、サーバーのランタイム電力消費量を 5GC ネットワーク内のデータ・トラフィックとリアルタイムで合致させ、スリープ状態やインテル® スピード・セレクト・テクノロジー (インテル® SST) などの内蔵機能を活用してワット当たりのパフォーマンスを最大 93% 向上させます。2
こうした電源管理フックの多くは現在インテル® Xeon® プロセッサーの 「N」SKU で利用可能となっており、将来の世代ではさらなる最適化とワークロードのレベルでの電源指示が追加されます。
接続性: インテル® イーサネット 800 シリーズ・ネットワーク・アダプター
インテル® イーサネット 800 シリーズ・ネットワーク・アダプターは、最大 100GbE の速度を実現し、パケット処理の最適化と完全なプログラマブル・パイプラインを提供するので、CoSP がネットワーク・コアのレイテンシーとスループットを向上させるのに役立ちます。これらのアダプターは、柔軟なポート構成の提供に加えてダイナミック・デバイス・パーソナライゼーション (DDP) をサポートし、即時処理のために CPU に送信するパケットのインテリジェントな優先順位付けを行います。
インテル® 5GC スタックでスムーズなネットワーク変換を実現
インテルのリーダーシップは、ネットワーク・オペレーターの効率性向上と高品質なエンドユーザー体験の確保に役立つソフトウェアとリファレンス・アーキテクチャーにも及びます。
ソフトウェア: インテル® 5G コア・スタック
インテルは、ベンチマーク、パフォーマンスと最適化を含む社内テストに 5G コア対応のソフトウェアスタックを利用しています。このプラットフォームは、CoSP と通信機器製造メーカー (TEM)、ソフトウェア・ベンダーのソリューションを調整して最高のパフォーマンスと効率性を実現できるようにするのに役立ちます。このスタックはまた、ネットワーク・サービス・オーケストレーションと保証機能が 5G SA コアへの移行に充分であることの確認にも役立ち、導入を容易にします。
設計と導入: 5G コアのリファレンス構成
インテルのエンジニアは、communication as a service (CaaS) レイヤーからハードウェアまで低レベルのプラットフォーム構成について深い専門知識を持っています。Verified Reference Configuration (VRC) を提供することで、インテルは、複数のベンダーによるさまざまな構成ブロック間の整合性を確保します。こうした構成ブロックには、Data Plane Development Kit (DPDK)、Linux カーネル、さまざまな OEM プラットフォーム向けの最適化された BIOS およびファームウェア構成が含まれます。
この努力は、オペレーティング・システム・ベンダーと機器メーカー間の相互運用性の確保と、重要な 5G コア・アプリケーションと事前検証済み構成との整合性の実現に役立ちます。その結果、CoSP は設計とテストに要する期間を数か月単位で短縮し、新しいプロセッサーとプラットフォーム・テクノロジーの導入を迅速に行うことができます。
このインタビューをご覧ください。ネットワーク・トランスフォーメーションのため BT Group が共通プラットフォームを確立した際、インテルがどのように BT Group の課題解決に役立ったかを説明します。
クラウドネイティブな 5G スタンドアロン・コアのために比類ない性能を実現
インテルとの連携により、通信エコシステムは、優れたパフォーマンス、最適化された電源管理、自動化されたサービス保証を備えた、クラウドネイティブな 5G SA コアを導入しています。さらに、インテル® ネットワーク・ビルダーには 500 を超える企業が集まっており、インテルは、仮想化機能とクラウドネイティブなプラットフォームによるネットワークの柔軟性、アジリティー、サービス保証とスケールのメリットを通信の分野で実現させるため、TEM、ISV、OSV、CoSP との協力を行っています。