SRv6 を活用して 5G ネットワークの柔軟性を向上
エッジ・コンピューティング、ネットワーク・スライシング、低レイテンシー・サービスといった待望の 5G 機能が、スタンドアロン 5G ネットワークへの移行によって今ようやく実現されはじめようとしています。これを大規模に実現するための選択肢の 1 つとして、5G および次世代ネットワークをセッションベースのパケット・ルーティングから IP ベースのパケット・ルーティングに移行することが考えられます。
IPv6 上の SRv6 (セグメント・ルーティング) を使用した実現方法を示すため、日本で最初に5G SA サービスの提供を開始したMNO (移動体通信事業者) であるソフトバンクは、インテル、Arrcus と共同で SRv6 MUP (SRv6 Mobile User Plane) ベースのネットワークのビジョンを提示しました。
この新しい SRv6 MUP テクノロジーの PoC (概念実証) は、インテル MWC バルセロナ「Built for Wonderful」ウェブページにあるインテルのバーチャルブースで展示されています。
レガシー回線交換アーキテクチャーの改善
レガシーのモバイル・ネットワークは、回線交換 / セッションベースのネットワーク上にパケット交換ネットワークを重ねることによって構築されていました。パケット交換のみのネットワークに移行すれば、柔軟性が高まり、お客様に近いユーザープレーンで MEC (マルチアクセス・エッジ・コンピューティング) をサポートできるようになり、ネットワークのレイテンシーを低減できる可能性があります。
また、パケット交換ネットワークは、RAN (無線アクセス・ネットワーク)、コア・ネットワーク、トランスポート・ネットワーク全体でパケットの流れのオーケストレーションを必要とするネットワーク・スライシングを実現するのにも有利です。
3GPP で規定された 5G ネットワーク内に SRv6 セグメント・ルーティング・ドメインを作成すると (図 1 参照)、SRv6 MUP はこれらの 5G 機能を実現する環境を提供できます。MWC におけるソフトバンク / インテル / Arrcus によるデモンストレーションはこのことを実証しています。
SRv6 がもたらす一元的なネットワーク制御
SRv6 セグメント・ルーティング・テクノロジーは、IPv6 フォワーディング・プレーンに基づき、トラフィック・エンジニアリング、トラフィック・ステアリングなどを含む SDN (ソフトウェアによって定義されたネットワーク) 機能を提供します。
ネットワーク内のスイッチやルーター上で動作する SRv6 対応の NOS (ネットワーク・オペレーティング・システム) は、輻輳が起こらないように設定されたネットワーク・セグメントに基づいてパケットがフォワーディングされる SRv6 ドメインを作成します。パケットは、イングレスノードを介して SRv6 ドメインに入り、エグレスノードを介して出ていきます。その間、パケットは事前定義された最大 16 セグメントの経路上をトランジット・ノードによってフォワーディングされます。これらのノードにはスイッチ、ルーター、その他のソース・ルーティング・ベースのネットワーク装置などがあります。セグメントは、ネットワークの変化に応じて SDN コントローラーによって変更できます。このようにして、SRv6 を使用してネットワークの特定の部分のトラフィックを制御できます。
モバイル・ユーザー・プレーンを強化する SRv6
このソリューションの詳細は MWC のデモビデオでご覧いただけます。図 2 に示すように、SRv6 ネットワーク・ドメインは Arrcus の ArcOS NOS を使用して作成されています。ArcOS は、インテル® Tofino™ インテリジェント・ファブリック・プロセッサーを使用するスイッチ上で動作し、パケットの処理と 5G コアへのフォワーディングのために MUP-GW (MUP ゲートウェイ) において GTP-U から SRv6 への変換を行います。また、ArcOS は第 2 世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを搭載した MUP-C (MUP-Controller) サーバー上および MUP-PE (Provider Edge) スイッチ上でも動作しています。MEC トラフィックのシミュレーションには、第 2 世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーベースの MEC Server (MEC サーバー) が使用されました。
参照リンク: 5G Gateway SRv6 デモ動画
MWC PoC デモでは、MUP コントローラーを無効にした場合と有効にした場合のそれぞれで SRv6 ネットワークのパフォーマンスをシミュレーションし、パフォーマンスの違いをお見せします。MUP が無効の場合、パケットは各ホップで受け取るコマンドに基づいて、ホップバイホップでネットワークを通過します。そのため、ネットワークのレイテンシーが長くなります。一方、MUP を有効にした場合、トラフィックがネットワーク・セグメントに従って効率的にフォワーディングされるため、レイテンシーが短くなります。PoC ビデオでは、これをデータの流れを見ながら確認できます。
まとめ — Beyond 5G に向けた大規模分散コンピューティングの推進
SRv6 MUP は、低レイテンシーをサポートする大規模な MEC ベースの分散コンピューティングを可能にし、5G と将来のネットワークにおけるネットワーク・スライシングに備えたネットワーク柔軟性を提供するテクノロジーの選択肢の 1 つです。MWC PoC デモでは、ソフトバンクの SRv6 MUP ネットワーク設計を使用して、どのように IP ルーティングを 5G ネットワークに導入し、SRv6 を使用して柔軟性、効率性、スループットを高めて大規模分散機能を強化できるかをご覧いただけます。
詳細については、ソフトバンクのプレスリリース「MEC やネットワーク・スライシングを低コストかつ容易に実現する「SRv6 MUP」の開発に成功」を参照してください。
本記事は、2022年発表の下記英語記事の翻訳です。
Intel MWC Barcelona Blog: SRv6 Mobile User Plane (SRv6 MUP) Technology Demo (Medium)