インテル® Cyclone® 10 GX FPGA デバイス用 Early Power Estimator ユーザーガイド

ID 683150
日付 5/08/2017
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ドキュメント目次

4.2. Cyclone® 10 GX デバイス用 EPE - Main ワークシート

Cyclone® 10 GX デバイス用 Early Power Estimator (EPE) の Main ワークシートでは、デバイス、パッケージ、および冷却情報の入力ができ、熱電力と熱解析の情報を表示します。
図 7.  Cyclone® 10 GX デバイス用 EPE の Main ワークシート

必要なパラメーターは、ジャンクション温度を手動で入力するか、自動計算されるかによって異なります。

表 6.  Input Parameter 情報
パラメーター 説明
Family デバイスファミリーを選択します。
Device

デバイスを選択します。

より大きいデバイスでは、スタティック消費電力とクロックのダイナミック消費電力が増加します。それ以外のすべてのコンポーネントの消費電力では、デバイス選択の影響を受けません。

Device Grade

使用する動作温度、スピードグレード、および電源オプションの組み合わせを選択します。

  • 動作温度:Extended (TJ = 0C to 100C)、Industrial (TJ = -40C to 100C)
  • FPGA コア・ファブリック・スピードグレード:5 ( より速い )、または6。
  • 電源オプション:S ( 標準 )
Package

デバイスパッケージを選択します。

より大きいパッケージでは、冷却面がより大きくなり、回路基板との接触点が増加するため、熱抵抗が減少します。パッケージの選択は、ダイナミック消費電力に直接影響しません。

Power Characteristics

標準的または理論上のワースト・ケース・シリコン・プロセスを選択します。

ダイ間で、プロセスのばらつきがあり、主にスタティック消費電力に影響を及ぼします。

Power Characteristics でTypicalを選択すると、標準シリコンによる平均消費電力値に基づく見積り結果になります。FPGA ボードの電源デザインでは、ワースト・ケース値として Maximumを選択します。Enpirion デバイスの選択を有効にするには、Power Characteristics でMaximumを選択してください。

VCC Voltage (mV) デバイスの VCCパワーレールを単位 mV で選択します。
Power Model Status デバイスのパワーモデルが、予備または最終状態かを示します。

Early Power Estimator への正確な入力を仮定すると、計算された電流値のマージンは以下のようになります。

  • Vcc の推奨マージンは、ほとんどのデザインで 15% 以下です ( デザインの正確な値は Report タブ参照 )。
  • トランシーバー・レールの推奨マージン (Vcch_gxb、Vcct_gxb、Vccr_gxb) は、15% 以下です。
  • Vcceramの推奨マージンは 5% です。
  • その他のすべてのレールの推奨マージンは、25% です。
Junction Temp, TJ ジャンクション温度 (TJ) を自動的に計算するか、ユーザーが入力するかを選択します。
Ambient Temp, TA (°C)/Junction Temp, TJ (°C)

デバイスを冷却する大気の温度を入力します。この値は、選択したデバイスのグレードに応じて、–40°C~125°Cの範囲で設定できます。ジャンクション温度オプションのAuto Computeをオンにすると、このフィールドに周囲温度を入力でき、それ以外の方法では実際のジャンクション温度を入力します。

Cooling Solution

関連するエアフローの冷却ソリューションを選択します ( このフィールドは、ジャンクション温度を直接入力する場合は使用できません )。

ヒートシンクとエアフローの代表例が示されます。ヒートシンクが大きいほど熱抵抗が減少するため、ジャンクション温度も低下します。ヒートシンクとエアフローが把握できている場合は、データシートを参照し、Customを選択して、 θJAJunction-Ambient フィールドにシステムに応じてジャンクションから周辺までの値を入力します。

θJA Junction-Ambient 特定のカスタム冷却ソリューションがある場合、Junction-Ambient 値を単位 °C/W で入力します。この値は、Auto Computeを選択した場合、最後のジャンクション温度の計算に使用されます ( このフィールドは、ジャンクション温度を直接入力する場合は使用できません )。
Board Thermal Model

このフィールドは、ヒートシンクが未使用、もしくはジャンクション温度を直接入力する場合は、使用できません。

熱解析で使用するボードタイプを選択します。使用可能な値は、次のとおりです。
  • None (Conservative):このモデルを選択すると、システムはボードからの放熱がないものと見なします。その結果、ジャンクション温度は悲観的に計算されます。
  • Typical:このモデルを選択すると、システムは選択されたデバイスとパッケージに基づく標準的なカスタマー・ボード・スタックの特性と見なします。
  • Custom:このモデルを選択すると、下のフィールドに θJB Junction-Board の適切な値を入力する必要があります。

システムの詳しい熱シミュレーションを実行し、最後のジャンクション温度を決定する必要があります。この2つの熱抵抗モデルは初期見積り専用です。

θJB Junction-Board

特定のカスタム Board Thermal Model がある場合、 θJB Junction-Board値を単位 °C/W で入力します ( このフィールドは、ヒートシンクが未使用の場合、またはジャンクション温度を直接入力した場合は使用できません ) 。

Board Temp, TB (°C)

カスタムまたは標準 Board Thermal Model を入力した場合の熱計算で使用するボード温度を単位 °C でを入力します ( このフィールドは、ヒートシンクが未使用の場合、またはジャンクション温度を直接入力した場合は使用できません ) 。

熱消費電力とは、デバイス内で放散される電力のことです。総熱消費電力は、スタティック、スタンバイ、およびダイナミック消費電力を含んだデバイスで使用されるすべてのリソースの熱消費電力を合計したものです。総熱消費電力には、I/O ワークシートの熱コンポーネントのみが含まれ、リファレンス電圧終端抵抗のような外部からの熱消費電力は含まれません。

スタティック消費電力 (PSTATIC) とは、デザインの動作とは無関係のチップ上の熱消費電力のことです。PSTATICは、I/O DC バイアス消費電力とトランシーバー DC バイアス消費電力以外の、すべての FPGA 機能ブロックからのスタティック消費電力を含み、I/O と XCVR ワークシートのそれぞれにスタンバイ消費電力が含まれています。PSTATICは、ジャンクション温度と電力特性 ( プロセス ) によって変化する唯一の熱電力コンポーネントです。PSTATICは、選択されたデバイスで大きく異なる唯一の熱電力コンポーネントです。

表 7.  Thermal Power (W) 情報
カラムヘッダー 説明
Logic ALM( アダプティブ・ロジック・モジュール ) 、FF( フリップブロック ) 、および関連する配線でのダイナミック消費電力を表示します。Logicをクリックし、詳細を表示します。
RAM RAM と関連する配線でのダイナミック消費電力を示します。RAMをクリックし、詳細を表示します。
DSP DSP( デジタル信号処理 ) ブロックと関連する配線でのダイナミック消費電力を表示します。DSPをクリックし、詳細を表示します。
Clock クロック・ネットワークのダイナミック消費電力を表示します。クロックのダイナミック消費電力は選択されたデバイスで影響されます。Clockをクリックし、詳細を表示します。
PLL PLL( フェーズ・ロック・ループ ) でのダイナミック消費電力を表示します。PLLをクリックし、詳細を表示します。
I/O I/O ピンと I/O サブシステムの熱消費電力を表示します。I/Oをクリックし、詳細を表示します。
XCVR トランシーバー・ブロックの総消費電力を表示します。XCVRをクリックし、詳細を表示します。
Pstatic クロック周波数とは無関係のスタティック消費電力を表示します。I/O とトランシーバー・ブロックのスタティック消費電力を含みますが、スタンバイ消費電力は含みません。Pstatic は、ジャンクション温度、選択されたデバイス、電力特性、M20K、DSP、および高速 LABの使用量によって影響されます。
注: 特定のデバイスのスタティック消費電力の測定についての情報は、付録スタティック消費電力の測定を参照してください。
TOTAL (W) FPGA からの熱として放散される全電力です。この電力には、オフチップ終端抵抗での消費電力は含まれません。
注: いずれかの熱電力値が赤色で強調された場合は、デザイン仕様のエラーを示します。エラーまたは使用率が 100% を超えている関連ワークシートを確認してくださいい。信頼性の高い電力と温度の見積りを取得するために、エラーを修正してください。

Thermal Analysis の項では、ジャンクション温度 (TJ) を示し、 大きい周辺温度 (TA) 値を許容します。

表 8.  Thermal Analysis 情報
カラムヘッダー 説明
Junction Temp, TJ (°C)

Junction Temp (TJ) で値を入力した場合、このフィールドの値は入力した値と等しくなります。

Junction Temp (TJ) で Auto Compute を入力すると、このフィールドは、提供された熱パラメーターに基づいて、見積られたデバイスのジャンクション温度を表示します。ジャンクション温度は、チップのトップとボードを介して全熱電力を放散して決定されます。

Maximum Allowed TA (°C) / Maximum Allowed TJ (°C)

Junction Temp (TJ) で値を入力すると、このフィールドの値は、入力定したデバイスグレードに基づいたより大きい許容デバイスのジャンクション温度 ( 単位 °C) になります。

Junction Temp (TJ) で Auto Compute を入力すると、このフィールドは、入力された冷却ソリューションとデバイスグレードに基づいて、より大きい許容ジャンクション温度を超えずにデバイスが受け入れられる、より大きい周囲温度 ( 単位 °C) のガイドラインを提供します。 

提供された情報に基づいて、ジャンクション温度を直接入力するか、自動的に計算することができます。ジャンクション温度を入力するには、Input ParametersセクションのJunction TempフィールドでUser Enteredを選択します。ジャンクション温度を自動的に計算するには、同じフィールドでAuto Computeを選択します。

ジャンクション温度を自動的に計算する際は、デバイスの周囲温度、エアフロー、冷却ソリューション、ボードの熱モデル、およびボード温度により、ジャンクション温度を単位 °C で決定します。ジャンクション温度は、デバイスと熱の条件に基づいて見積られる動作ジャンクション温度です。

デバイスをヒートソース、ジャンクション温度をデバイスの温度として考慮することができます。通常、温度はデバイスの各部で異なりますが、解析の簡略化のために、デバイスの温度は測定場所に関係なく一定であると見なすことができます。

デバイスからの電力は、多くの経路を通して放散されます。システムの熱特性によってさまざまな経路が重要になります。電力の放電経路は、デバイスでヒートシンクを使用するかどうかにより、重要性が異なります。

ヒートシンクの未使用

ヒートシンクが未使用の場合、電力は主にデバイスから大気中に放散されます。これは、ジャンクションから周囲までの熱抵抗と言えます。この場合、ジャンクションから周囲までの重要な熱抵抗の経路が2つあります。
  • デバイスからケースを通過し大気中に放散
  • デバイスからボードを通過して大気中に放散
図 8. 熱の放散図 ( ヒートシンク未使用時 )

EPE スプレッドシートで使用するモデルでは、電力はケースとボードを通して放散されます。θJA値は、ケースを通過する経路とボードを通過する経路を考慮した異なるエアフローオプションで計算されます。

図 9. EPE スプレッドシートの熱モデル ( ヒートシンク未使用時 )

周囲温度は変化しませんが、ジャンクション温度は熱特性と総消費電力により変化し、このジャンクション温度の変化に影響されます。ジャンクション温度の計算は繰り返し行われます。

次の等式は、θJA値、周囲温度、およびジャンクション温度の合計に基づいて計算された全電力を示しています。

ヒートシンクの使用

ヒートシンクを使用する場合、電力は主に、デバイスからケース、熱インタイフェイス材料、およびヒートシンクを通過して放散されます。また、ボードを通過する放電経路もあります。ボードを通過する経路は、大気への経路と比べると影響が少ないです。

図 10. 熱の放散図 ( ヒートシンク使用時 )

EPE スプレッドシートで使用されるモデルでは、電力の放散は、ボードを通過する経路と、ケースとヒートシンクを通過する経路があります。ジャンクションからボードまでの熱抵抗 JB) は、ボードを通過する経路の熱抵抗と言えます。ジャンクションから周囲までの熱抵抗 (θJA) は、ケース、熱インターフェイス材料、およびヒートシンクを通過する経路の熱抵抗と言えます。

図 11. EPE スプレッドシートの熱モデル ( ヒートシンク使用時 )

EPE スプレッドシートの熱モデルにθJB を考慮する場合は、Board Thermal Model パラメーターをTypicalまたはCustomに設定します。それ以外では、Board Thermal Model パラメーターをNone (conservative) に設定します。この場合、ボードを通過する経路は消費電力には考慮されず、より慎重な熱消費電力の見積りが得られます。

ジャンクションから周囲までの熱抵抗 (θJC)、ケースからヒートシンクまでの熱抵抗 (θCS)、およびヒートシンクから周囲までの熱抵抗 (θSA) の加算は、次に示す θJAの等式で算出されます。

パラメーターのセクションで選択したデバイス、パッケージ、エアフロー、およびヒートシンク・ソリューションに基づいて、EPE スプレッドシートは θJAを産出します。

ロー、ミディアム、またはハイ・プロフィール・ヒートシンクを使用する場合、Still Airの値と100 lfm (0.5 m/s)200 lfm (1.0 m/s)、および400 lfm (2.0 m/s) のエアフロー率から、エアフローを選択します。カスタム冷却ソリューションを使用する場合は、カスタム θJA値を入力します。カスタム θJA値には、エアフローとジャンクションからケースまでの抵抗を統合する必要があります。これらの値は、ヒートシンクの製造元から入手することができます。

周囲温度は変化しませんが、ジャンクション温度は熱特性によって変化します。ジャンクション温度が変化すると、ジャンクション温度の計算に使用するデバイスの熱特性に影響するため、ジャンクション温度の計算は繰り返し行われます。これらのデバイスの熱特性は、ジャンクション温度の計算に使用されます。

総消費電力は、θJAと θJB値、ボードの周囲温度およびジャンクション温度に基づき、次の等式で計算されます。

表 9.  Control Button の機能
ボタン名 説明
Logic Logic ワークシートを開き、ALM( アダプティブ・ロジック・モジュール ) 、FF( フリップブロック ) 、および関連する配線でのダイナミック消費電力の詳細を表示します。
RAM RAM ワークシートを開き、RAM と関連する配線でのダイナミック消費電力の詳細を表示します。
DSP DSP ワークシートを開き、DSP( デジタル信号処理 ) ブロックと関連する配線でのダイナミック消費電力の詳細を表示します。
クロック Clock ワークシートを開き、クロック・ネットワークと関連する配線でのダイナミック消費電力の詳細を表示します。
PLL PLL ワークシートを開き、PLL( フェーズ・ロック・ループ ) と関連する配線でのダイナミック消費電力の詳細を表示します。
I/O I/O ワークシートを開き、I/O ピンと I/O サブシステムでの熱消費電力の詳細を表示します。
XCVR XCVR ワークシートを開き、トランシーバー・ブロックでの総消費電力の詳細を表示します。
Reset Early Power Estimator をデフォルト値にリセットし、入力したすべてのパラメーターを消去します。
Import CSV コンマ区切り値ファイルからパラメーターへインポートが可能です。
Export CSV パラメーターからコンマ区切り値ファイルにエクスポートが可能です。
View Report Report ワークシートを表示します。
Manage Power Rail Configuration Report ワークシートに Power Rail Configuration の表を表示します。
Manage Power Regulators Enpirion ワークシートに Regulator Selection の表を表示します。