インテル® Arria® 10 トランシーバーPHY ユーザーガイド

ID 683617
日付 4/20/2017
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ドキュメント目次

3.1.2. ATX PLL

ATX PLL には、LC タンクベースの電圧制御オシレーター (VCO) が内蔵されています。 これらのLC VCO は、連続した動作範囲をサポートするために周波数範囲が異なります。トランシーバーを直接駆動する場合、ATX PLL は整数モードのみをサポートします。カスケードモードでは、ATX PLL はフラクショナル・モードのみをサポートします。
図 168. ATX PLL のブロック図

入力リファレンス・クロック

これは、PLL 専用の入力リファレンス・クロックソースです。

入力リファレンス・クロックは、次のいずれかから供給されます。

  • 専用の基準クロックピン
  • リファレンス・クロック・ネットワーク
  • レシーバー入力ピン
  • PLL カスケード接続された別のPLL の出力
  • グローバルクロックまたはコアクロック・ネットワーク
専用の基準クロックピンへの入力リファレンス・クロックは、差動信号です。インテルは、最高のジッター性能を得るために、入力リファレンス・クロックソースとして専用の基準クロックピンを使用することを推奨しています。正常なPLL 動作とPLL キャリブレーションを実行するには、デバイス起動時に入力リファレンス・クロックが安定し、かつフリーランニングである必要があります。デバイス起動時にリファレンス・クロックが使用できない場合は、リファレンス・クロックが使用可能になった時点でPLL をリキャリブレーションする必要があります。
注: ATX PLL キャリブレーションは、CLKUSR クロックによってクロッキングされますが、キャリブレーションを続行するにはCLKUSR クロックが安定しており使用できる状態でなければいけません。CLKUSR クロックの詳細についてはキャリブレーションの項を参照してください。

リファレンス・クロック・マルチプレクサー

リファレンス・クロック (refclk) マルチプレクサーは、利用可能なさまざまなリファレンス・クロックソースからPLL へのリファレンス・クロックを選択します。

N カウンター

N カウンターは、refclk マルチプレクサーの出力を分周します。サポートされている分周係数は1、2、4、8 です。

位相周波数検出器 (PFD)

N カウンターブロックの出力部におけるリファレンス・クロック(refclk) 信号とM カウンターブロックの出力部におけるフィードバック・クロック(fbclk) 信号は、PFD への入力として供給されます。PFD の出力は、refclk 入力とfbclk 入力の位相差に比例します。PFD は、N カウンターの出力部におけるrefclk 信号をフィードバック・クロック(fbclk) 信号にアライメントするのに使用されます。リファレンス・クロックの立ち下がりエッジがフィードバック・クロックの立ち下がりエッジの前に発生したとき、PFD は「Up」信号を生成します。逆に、フィードバック・クロックの立ち下がりエッジがリファレンス・クロックの立ち下がりエッジの前に発生した場合には、PFD は「Down」信号を生成します。

チャージポンプおよびループフィルター

PFD 出力は、VCO に向けて制御電圧を生成するために、チャージポンプとループフィルター (CP + LF) によって使用されます。チャージポンプは、PFD からの「Up」または「Down」パルスを電流パルスに変換します。電流パルスは、ロー・パス・フィルターを介してVCO 周波数をドライブする制御電圧にフィルターされます。チャージポンプ、ループフィルター、およびVCO 設定は、ATX PLL の帯域幅を決定します。

ロック検出器

ロック検出器ブロックは、リファレンス・クロックとフィードバック・クロックの位相がアライメントされていることを表します。ロック検出器は、PLL が入力リファレンス・クロックにロックされていることを示すために、アクティブHigh のpll_locked 信号を生成します。

電圧制御オシレーター

ATX PLL で使用される電圧制御オシレーター (VCO) は、LC タンクベースです。チャージポンプとループフィルターの出力は、VCO への入力として機能します。 VCO の出力周波数は入力制御電圧に依存します。出力周波数は、チャージポンプとループフィルターの出力電圧に基づいて調整されます。

L カウンター

M カウンター

VCO freq = 2 * M * 入力リファレンス・クロック/N

L カウンターがPLL のフィードバック・パス内に存在しないため、追加の分周器がVCO の高速シリアルクロック出力がM カウンターに到着する前に2 で除算します。

M カウンターは整数周波数合成モードで8~127 の範囲内、またフラクショナル・モードで11~123 の範囲内の連続的な分割要因をサポートしています。

デルタシグマ変調器

フラクショナル・モードは、ATX PLL がOTN とSDI プロトコルのカスケードソースとして設定されている場合にのみサポートされます。デルタシグマ変調器は、フラクショナル・モードで使用されます。 PLL が分数周波数合成を実行できるように、M カウンターの分周値を経時的に変調します。フラクショナル・モードでは、M 値は以下の通りです。

M (整数) + K/2^32 (ここでは、K はATX PLL IP パラメーター・エディターでのフラクショナル乗算係数 (K) です)

K の正当な値は1〜2^32-1 であり、Quartus Prime ソフトウェアでATX PLL IP パラメーター・エディターに手動で入力する必要があります。

ATX PLL をフラクショナル・モードで設定すると、出力周波数が正確になることがあります。K 値の32 ビット分解能のため、7Ghz のVCO 周波数に対して1.63 Hz ステップに変換すると、すべての望ましい分数値が正確に得られるわけではありません。K 精度モード (K < 0.1 またはK > 0.9) のフラクショナル・モードでコンフィグレーションされる場合、ロック信号は使用できません。

Multiple Reconfiguration Profiles

ATX PLL IP Parameter Editor のDynamic Reconfiguration タブの下で、Configuration Profiles セクションで、multiple reconfiguration profiles を有効にすることができます。これにより、ATX PLL IP の複数のコンフィグレーションまたはプロファイルのパラメーター設定を作成、保存、および分析することができます。

ATX PLL IP GUI は、指定されたコンフィグレーションのためのコンフィグレーション・ファイル (SystemVerilog、C ヘッダーまたはMIF) を生成することができます。Multiple Reconfiguration Profiles のオプションを有効にすると、ATX PLL IP パラメーター・エディターは、同時にすべてのプロファイルのコンフィグレーション・ファイルを生成することができます。また、縮小リコンフィグレーション・ファイルの生成 (Reduced Reconfiguration Files Generation) をイネーブルすることによって、IP パラメーター・エディターは、内部的にすべてのプロファイルの対応するパラメーターの設定値を比較し、差異を識別することによって縮小コンフィグレーション・ファイルを生成します。

Embedded Reconfiguration Streamer

このオプションは、複数のコンフィグレーションまたはプロファイル間を設定するプッシュ・ボタン・フローをイネーブルします。手順は以下のとおりです。
  1. 複数のリコンフィグレーション・プロファイルの作成
    • ATX PLL IP GUI では、マルチプロファイルの機能を使用して、各プロファイルのコンフィグレーションを作成します。
  2. リコンフィグレーション・レポート・ファイル
    • IP GUI は、選択したすべてのプロファイルのパラメーターとレジスター設定を含むリコンフィグレーション・レポート・ファイルを生成します。縮小リコンフィグレーション・ファイルのオプションを選択した場合、IP パラメーター・エディターは、プロファイル間の設定を比較し、相違点のみが含まれている縮小レポートファイルを生成します。
  3. GUI で「Enable embedded reconfiguration streamer logic」を選択し、以下を生成します。
    • ストリーミングを実行するために必要なHDL ファイル
    • 各プロファイルの個別レポートファイル。コンフィグレーションROM の初期化に使用する、連結されているすべてのプロファイルのコンフィグレーション・データをまとめたSystemVerilog のパッケージファイル
  4. ATX PLL IP を生成し、AVMM マスターを使用してリコンフィグレーション・ストリーマを制御します。